『ラグビー・パシフィックネーションズカップ』で日本が5年ぶりに優勝しました!
ここまで全勝だったアメリカを34対20で下し、全勝優勝を果たしました。
9月のワールドカップ本番を前に、本当に価値のある優勝だと思います。
試合を振り返ってみると、もどかしい時間帯もありました。
防御ラインのオフサイドの反則を何度も取られていたのが、特に気になる点でしたね。
ワールドカップ本番のアイルランド、スコットランド相手だと、ラインオフサイドを何度も繰り返すと絶対に勝てないでしょうから。
でも、本番前に、この段階で課題を修正できるというのはよいですね。
それも試合に勝って課題を修正していけるというのは、理想的な流れと言えるかもしれません。
オフサイドの反則を除けば、日本代表のディフェンス力はかなり向上してきていますよね。
体格差から接点で食い込まれる、というのを繰り返して、徐々に点差が開いていく、というのが長年の日本ラグビーの課題だったわけですが、その部分が大きく改善されてきていますよね。
そして個々人の体が強くなってきたので、以前よりも相手の体の高い所へヒットするケースも増えていますよね。
以前は高くタックルに入ると弾かれてしまうために、低いタックル一辺倒で、それが日本のお家芸みたいにも言われていたわけです。
でも、オフロードパスの技術がここまで高くなってきた現代ラグビーでは、低くタックルに入ると、簡単にボールを繋がれてしまうんですよね。
だから、タックルに入る箇所を以前よりも高く設定して、ボールを殺し切ることを意識しているのでしょう。
1人目のタックルに続き、すぐに2人目が上体に絡みつくようなタックルに入る場面も目立ちました。
以前の日本代表のディフェンスとは違った事に取り組んでいて、その成果が出始めていることがよく分かる試合でした。
接点近くでのフォワードのタックルは本当に見事だったわけですが、中でもフッカーの堀江翔太はもはや職人芸のようなタックルを繰り返していますよね。
普通であれば体格差を活かされて吹き飛ばされるような局面でも、体の入れ方などを工夫することで、バチッと前進を全く許さずに止め切っていました。
リーチマイケルと共に絶対に外せない大黒柱のような存在ですね。
そしてバックスでは、試合前から注目していた山中亮平がよかったんじゃないでしょうか。
試合の序盤で、相手のキックを簡単にノックオンしてしまう場面があって、本人もかなり焦ったと思うんです。
でもその後、すぐに切り替えて、直後のプレーで、相手ボールに素早く反応してセービングした場面は、山中亮平のプレーがどんどん献身的になってきている事を顕著に表わしていました。
これまでの2試合(フィジー戦、トンガ戦)は、フルバックに入ったウィリアムトゥポウが、ディフェンスの局面ではスタンドオフの位置に入って、相手をしっかりと止め切っていました。
アタックはファンタジスタ的で抜群だけど、ディフェンス面に難があると言われ続けてきた山中亮平。
なので、この試合では、ディフェンスの局面でも田村優がそのままスタンドオフの位置に入ると思っていました。
ところが驚いたことに、ディフェンス時には山中亮平がスタンドオフの位置に入っていたんですよね。
そしてアメリカの巨漢選手が何度か山中亮平に突っ込んできたわけですが、力強いタックルでバチッと止め切っていました。
一度は相手のノックオンも誘うようなタックルでした。
昔から山中亮平のプレーを見続けてきて、応援しているファンとしては、この場面は本当に感動的でした。
自分だけの思いでプレーしているのではなく、色んな人の思いを背負って、あのような責任感のある献身的なタックルをする選手になったんだなぁと思うと胸が熱くなりましたね。
バックスのメンバーを決定する中心人物であろうトニーブラウン・アタックコーチは、山中亮平をフルバックスで起用することを決めた際、こんな事を言っていました。
「(オールブラックスのスタンドオフであり世界的スター選手である)ボーデン・バレットをフルバックで起用するようなもので、非常にエキサイティングだ」と。
田中史明が京都産業大学から三洋電機(現パナソニック)に入った時、トニーブラウンはスタンドオフでまだバリバリ活躍していました。
田中史明はいきなりレギュラーに抜擢されるわけですが、試合の組み立て方などトニーブラウンに全てを教わったと語っていました。
そして、試合でミスして落ち込んでいると、「落ち込んでいる暇があったら、この後のプレーで取り返せ!」と強く叱責されたことがあるようです。
その言葉で奮起した田中史明は、対戦相手・東芝のウィングの大型外国選手に激しいタックルを浴びせ、ミスを取り返すことができたようです。
そしてその勇気あるタックルに対してトニーブラウンは、「本当に素晴らしいプレーだった」と褒めてくれたみたいですね。
また、田中史明が日本人として初めてスーパーラグビーに挑戦した時、ハイランダーズのメンバーに入る為に下部チームの試合で悪戦苦闘していた際、
「ディフェンスで貢献できることをしっかりとアピールしろ!」とトニーブラウンはアドバイスしたようです。
トニーブラウン自身も、現役時代は相手の大型フォワードに対しても躊躇せず激しいタックルをする勇敢なプレーヤーとして尊敬を集めていました。
そのようにディフェンスにこだわりがあるトニーブラウンだけに、もしかしたら山中亮平のプレースタイルは好みじゃないんじゃないか、最終的に選ばないんじゃないか、と一抹の不安を抱いていたわけですが、トニーブラウンにもしっかり評価されるほど山中亮平のタックル力は向上していたんですね。
山中亮平の献身的なタックルの感慨に耽りながら、そんな事を思い出していました。
もちろん山中亮平だけじゃなく、今の日本代表のメンバーは、本当に献身的なタックルを何度も何度も繰り返します。
それが当たり前のチームの文化として深く浸透しているんでしょうね。
これから日本代表候補のメンバーは、網走合宿へと向かいます。
そこで最終的にワールドカップメンバーが絞り込まれるわけですね。
最終メンバーに選ばれる為のチーム内のサバイバルが、ワールドカップ本番に向けて一気にチーム力を高める起爆剤となるわけです。
誰が選ばれようとも、本当に素晴らしいチームに仕上がりつつあるラグビー日本代表を心から応援したいと思います。
最後にちょっとだけアメリカ代表のことを。
アメリカが『ラグビー・パシフィックネーションズカップ』でサモアを破ったり、ここまで躍進すると予想している人は少なかったと思います。
それほどアメリカは急激にチーム力が上がっているのですね。
その要因の一つとして、南アフリカのコーチングの影響が挙げられています。
ヘッドコーチにギャリー・ゴールド、ディフェンスコーチにジャック・フーリーが就任してから、メキメキと実力がついてきています。
南アフリカのダイレクトなラグビーがアメリカに合っているのでしょうね。
ギャリー・ゴールドとジャック・フーリーといえば、神戸製鋼ファンにとっては懐かしい名前ですよね。
神戸製鋼が低迷期を打開するため、初めて外国人のヘッドコーチを招聘したのがギャリー・ゴールドでした。
キックで陣地を取って、ラインナウトモールでトライを狙うという、面白みのないラグビーでしたが(笑)、神戸製鋼のディフェンス力は見違えるほど向上したんですよね。
そして世界的なアウトサイドセンター、ジャック・フーリーは鮮やかなランニングでトライの山を築いていました。
当時、世界一のアウトサイドセンターと呼び声の高いジャック・フーリーとコンビを組んでいたのが、山中亮平だったんですよね。
ジャック・フーリーと一緒にプレーすることで多くを学んだと思いますが、今回のアメリカ戦では、ギャリー・ゴールド、ジャック・フーリー共に山中亮平の成長を実感することになったと思います。
「日本vs.アメリカ戦」はJSPORTSで見逃し配信されています。
⇒⇒ JSPORTS公式サイト
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