『園子温という生きもの』鬼才・園子温を追ったドキュメンタリー

日本映画界の異端児・園子温を1年間に渡って追いかけたドキュメンタリー

 
園子温の作り出す映画は、凄まじいまでの情念に満ち溢れています。

過激な暴力、性描写も多いので、園子音の映画をどうしても受け入れられないという人がいる一方、崇拝している熱烈なファンも多数いるという園子温という特異な存在。

そんな園子温の事が深く描かれているのが『園子温という生きもの』というドキュメンタリー作品です。

園子温の映画ファンはもちろんの事、園子温の映画が受け入れられないという人も、園子温という人物の魅力を感じることのできる作品であると思いますよ。

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【ドキュメンタリーの内容】

「愛のむきだし」「冷たい熱帯魚」「ヒミズ」など挑戦的な作品を次々に生み出している映画監督・園子温。

新作映画の打ち合わせにとどまらず、アトリエで絵を描き、ミュージシャンとしてライブを行うなど、精力的な活動を続ける園子温とはいったい何者なのか!?

園作品の出演者である染谷将太、二階堂ふみ、妻の神楽坂恵も登場。

「人間というのは、描いて、表現して、生きることがいいことなんです!」(by園子温)

園子温は本当に格好いいです。

園子温の魅力と凄みがヒシヒシと伝わってくるドキュメンタリー。

園子温が何故格好いいのか?

それは全く恰好つけないからなんでしょうね。

このドキュメンタリー『園子温という生きもの』の中でも本人があるエピソードを話しています。

部屋が火事になって全部燃えてしまった時が人生の転機の一つだという事なんですね。

有り金をはたいて中古のビデオカメラを買い、そのビデオカメラを充電していたら、それが発火してしまい、部屋が全焼してしまった。

その時期は映画作りに行き詰っていて、これはもう「映画を止めろ」と映画の神様に言われているのかとも思った、と。

でも園子温は映画を撮るのを止めなかったんですね。

これはまた別のインタビューで園子温が答えていた事なんですが、部屋が火事になってしまってから、「文化庁新進芸術家」の研修員としてアメリカに行ったらしいんですよ。

環境をガラッと変えたかったのでしょうか。

ただ、その研修費を使い果たしてしまい、ホームレスと同じような放浪生活を送る羽目になってしまったようなんです。

それからどうしようもない低俗なレンタルビデオ屋に入り浸るようになり、そこでどうしようもない映画を毎日見るというような生活を送っていたようです。

でも、そんなどうしようもない映画を毎日見続けるという生活を送るなかで、

今まで自分の中で消せなかった「自意識」を完全に消え去ることができた

 
というのですね。

「自意識」を消し去ることの「難しさ」。というか「不可能さ」。

大なり小なり、誰しもが「人の目」を気にしてしまい、「自分が他人にどのように良く見えているのか」を気にしてしまいます。

「自己」だけで完結するのではなく、「他者」の評価を気にしてしまうわけですね。

園子温はその「自意識」を消し去ったからこそ、他者に迎合することなく、あの独特の表現、園子温にしか絶対に撮れない映画を撮る事に成功していったのかもしれませんね。

「日本に帰ったら商業映画をやろう。その時には人に嫌われることをやろう。」

 
そのように決意したようです。

それまでは、他の人に「評価されたい」、「好かれたい」と心のどこかでは思っていた。

そのような「優等生」的な要素を完全に根こそぎ剥ぎとろうとしたのです。

そして他人の評価を全く気にしない、「野心」のない無欲な映画を撮る事を決意したのです。

そうしなければ、「本当の輝き」には絶対にたどり着けないという境地に達した、ということなのですね。

そのように、いわば「悟った」心境で帰国することになるのです。

そして日本に戻ってきて、最初に撮った映画が「自殺サークル」だったのです。

残酷な場面が多いということで、批判も多かった作品ですね。

でも園子温は、今や他人の評価など一切気にすることなどなく、とにかく「自分が表現したいもの」だけに集中して「自殺サークル」を撮り切ったわけです。

ただひとつ、両親にまつわるちょっと切ないエピソードがあったようですね。

「やっと商業映画を撮るようになったかということで、両親が『自殺サークル』を観に来ちゃったんです。そして、とんでもない内容にすごく落ち込んで、お前の映画は二度と観ないと言って怒って帰ってしまったんです(笑)」

 
そのようにして、園子温の快進撃が始まっていったわけです。

その後の主な作品は以下のとおり。

自殺サークル(2002年3月)
Strange Circus 奇妙なサーカス(2005年12月)
紀子の食卓(2006年9月)
気球クラブ、その後(2006年12月)
愛のむきだし(2009年1月)
冷たい熱帯魚(2011年1月)
恋の罪(2011年11月)
ヒミズ(2012年1月)
希望の国(2012年10月)
地獄でなぜ悪い(2013年9月)
TOKYO TRIBE(2014年8月)
新宿スワン(2015年5月)
ラブ&ピース(2015年6月)
リアル鬼ごっこ(2015年7月)
映画 みんな! エスパーだよ!(2015年9月)
MADLY(2016年4月)
ひそひそ星(2016年5月)
新宿スワンII(2017年1月)
アンチポルノ(2017年1月)
クソ野郎と美しき世界「ピアニストを撃つな!」(2018年4月)

園子温にしか撮れない、オリジナル性に溢れた映画を撮り続けています。

これからも園子温から目を離すことができませんね!

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「園子温という生きもの」の中で、園子温が飲み屋で映画談議みたいなものをしている場面があるんですね。

そこで園子温が、好きな映画監督として「ラース・フォン・トリアー」を挙げていたんですよ。

僕もラース・フォン・トリアーは大好きなので何か嬉しかったですね。

「ダンサー・イン・ザ・ダーク」「アンチクライスト」「ニンフォマニアック」などの過激な作品を撮り続けている、デンマークの鬼才と呼ばれるラース・フォン・トリアー。

また改めてラース・フォン・トリアーの作品を本サイトでも取り上げてみたいと思います。
 

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