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『マチネの終わりに』あらすじ・予告編動画・著名人のコメント

『マチネの終わりに』

世界的なクラシックギタリストの蒔野聡史は、公演の後、パリの通信社に勤務するジャーナリスト・小峰洋子に出会う。
ともに四十代という、独特で繊細な年齢をむかえていた。
出会った瞬間から、強く惹かれ合い、心を通わせた二人。
洋子には婚約者がいることを知りながらも、高まる想いを抑えきれない蒔野は、洋子への愛を告げる。
しかし、それぞれをとりまく目まぐるしい現実に向き合う中で、蒔野と洋子の間に思わぬ障害が生じ、二人の想いは決定的にすれ違ってしまう。

互いへの感情を心の底にしまったまま、別々の道を歩む二人が辿り着いた、愛の結末とは―

(引用元:映画『マチネの終わりに』公式サイト)

■『マチネの終わりに』の小説を読んだ著名人のコメント

【作家・林真理子】
「私が今世紀読んだ最高の恋愛小説」

【小峰洋子を演じた石田ゆり子】
「こんなふうに人を愛せたら。そう思わずにはいられなかった。五感すべてを使って、噛みしめるように読んだ。この物語の中に、浸っていたい。こんな恋愛小説は、はじめて」

(引用元:『マチネの終わりに』特設サイト

『マチネの終わりに』を動画で観た感想

『マチネの終わりに』感想

『マチネの終わりに』を動画で観た僕の感想をここから書いていきたいと思います。

哲学的考察の深さ」と、「胸が張り裂けそうになるほどの熱く切ない恋愛の描写」。

その両方の要素が、ここまで高度にバランスよく見事に成り立っている作品ってなかなかないと思うんです。

哲学的考察の深さを感じるマチネの終わりに

それが芥川賞作家・平野啓一郎の凄みですね。

小峰洋子を演じた石田ゆり子が小説を読んだときに感じた感想を先ほど紹介しました。

「こんなふうに人を愛せたら。そう思わずにはいられなかった。」

僕もそのように強く感じました。

誰しもがそのように感じることになるのではないでしょうか。

「魂で誰かを愛するということ」

短い人生の中で、そんな事が起きるかどうか分からない。

でも、もし、そんな人が現れて、自らの全てを懸けて全身全霊で愛することができたなら。

そんな素晴らしいことはないですよね。


『マチネの終わりに』のテーマはいくつかあると思うのですが、その中でも僕は「記憶」「孤独」というテーマを深く感じ取ることになりました。

まずは「記憶」について。

これがこの作品のメインテーマかもしれませんね。

マチネの終わりに 記憶

蒔野と洋子が初めてあった日、ある会話の中で、蒔野は洋子にこのように語りかけました。

「人は変えられるのは未来だけだと思い込んでる。だけど、実際は、未来は常に過去を変えてるんです。

変えられるとも言えるし、変わってしまうとも言える。過去は、それくらい繊細で、感じやすいものじゃないですか。」

洋子は蒔野のこの言葉に深い感銘と衝撃を受けるのです。

自分の今までの人生の中で、心にトゲが刺さっているかのように、痛みを感じ続けてきたこと。

ただそれを明確に言語化できずにいたこと。

それをここまで深く明確に表現してくれた人に初めて出会えた感動衝撃

「自分自身の心の奥底の部分を、ここまで深く理解してくれる人がいたなんて。。」

洋子はそのように感じたのでしょう。

そしてそれはそっくりそのまま蒔野にも当てはまるのです。

洋子の感受性の豊かさを瞬時に察知して、この人となら深く分かり合えるかもしれない、と。

38歳の蒔野と40歳の洋子。

天才的なクラシックギタリスト国際ジャーナリストという社会的地位も確立している二人。

天才的なクラシックギタリスト

そんな成熟した大人の二人が、それまでの人生では味わったことのない衝撃をお互いの存在から受け取るわけです。

たった一度の短い出会いであるにも関わらず。

ただ、洋子にはフィアンセがいるので、一瞬沸き起こったこのような熱い気持ちを胸の奥深くに押し殺し、なかったことのようにしようとするわけです。

でもそんな小細工で忘れ去れるような小さな思いではなかったわけですね。


それから、洋子の身に起こった事件などを挟み、なかなか会えない日々が続く中でも、メールやビデオメッセージでやり取りを続けた二人。

蒔野がマドリードで開催されるコンサートに出演することになり、フランスのパリに住む洋子を訪ねることになります。

フランスのパリに住む洋子

そこで2度目の出会い

食事をしながら会話をする中、蒔野は洋子への思いを押しとどめることができず、自らの気持ちを全て曝け出すのです。

「洋子さんの存在こそが、僕の人生を貫通してしまったんだ。いや、、貫通しないで、深く埋め込まれたままで。。」

いきなりの蒔野の深い告白を受け、洋子は反射的に反論するのです。

「私たちは住んでる場所も違う。仕事も、これまでも。例えば一緒に暮らして、子供を育てる生活を現実的に想像できる?それがこの関係の正しい答えなのかしら?」

でも、蒔野の思いは変わらないのです。

「正しいかどうかはわからない。でも、出会ってしまったから。その事実をなかったことにはできないんだよ。
小峰洋子という一人の人間が存在しなかったという人生は、僕にとってはもう『非現実』なんだ。
僕が生きる現実には洋子さんが存在してるんだ。
そしていつも傍で洋子さんが存在し続けてほしいと思ってる。」

「貫通」「深く埋め込まれた」という言葉が、単なる軽い比喩表現ではなく、本当に深い実感を伴ったリアルな言葉だという印象がヒシヒシと伝わってくる場面です。

一度の出会いで、相手の存在が、それまでの自らの長い人生を貫通してしまうほどの強烈な衝撃。

そして、蒔野の熱い心のこもった言葉を深く受け止めた洋子は婚約を解消するのです。

蒔野と一緒に人生を歩んでいこうと決心し、日本へと帰ってきた時に取り返しのつかない事件が起きてしまうのですね。

洋子が帰国した時、タイミング悪く蒔野のギターの師匠が倒れてしまいます。

ケータイもタクシーに忘れてしまった蒔野は洋子と連絡する術もなくなってしまい、マネージャーの早苗にケータイを取りに行ってもらうのです。

「私の人生の目的な蒔野なんです」と言うほどに蒔野の事を深く愛していた早苗は、魔が差してしまい、蒔野のケータイを使って洋子に嘘のメッセージを送るのです。

嘘のメッセージ

その後、いくつかの行き違いもあって、蒔野と洋子はもう再び会うこともなく、二人の人生は交差することなく、全く違う方向へと流れて行ってしまうのです。

まさに悲劇です。

そこからは、二人とも「孤独」という影が深くつきまとう人生を送っていくことになるわけですね。

蒔野は早苗と結婚して、女の子が生まれます。

傍から見れば幸せ一杯の理想の家族像です。

洋子も元フィアンセと結婚し、男の子が生まれます。

でも、強欲なウォール街の連中と付き合っている旦那とは価値観が全く合わないのです。

ジャーナリスト時代から「正しさ」を大切にしてきた洋子にとって、倫理観が欠如しているように見える旦那の事をどうしても愛することができなくなったのですね。

そして必然のように別れの時がやってきました。

蒔野にも洋子にも、かけがえのない「子供」という存在ができました。

でも、常に「孤独」の影が付きまとっているのです。

孤独

蒔野は洋子に、洋子は蒔野に、出会ってしまった瞬間から、もうその相手が存在しなくなってしまった人生は、「非現実」にようになってしまっているのです。

生きてはいるけど、生きてはいないような人生。

本当に深く分かり合える人がいるという奇跡のような事実を知ってしまった直後に、そのかけがえのない存在を奪い去られてしまうという残酷な人生

大切な部分が欠如したような、そんな人生を送っていた二人。

そんな二人が、4年の歳月を経て、それぞれに色んな苦悩を経験した後、最高の舞台で再会することになるのです。

『マチネの終わりに』再会の舞台

長い長い苦しみに満ちた4年間を何とか耐え抜いた二人。

やっと出会えたその瞬間、洋子の笑顔に込められたあらゆる感情が混じり合ったその表情。

神々しいほどに美しいです。

そして二人の苦悩がこちらにもヒシヒシと伝わってきて、涙が流れるのを止めることができませんでした。

洋子のその表情に救われたような気持ちになりました。

切なくも美しい、感動的なラストシーンです。


『マチネの終わりに』を観ようと思っている人の中で、福山雅治ファンは多いと思います。

福山雅治のクラシックギター演奏は本当にカッコよくて美しいですよ。

福山雅治のクラシックギター演奏

クラシックギターの第一人者である福田進一が監修しているだけあって、福山雅治が本物の天才クラシックギター奏者のように見えてくるんです。

映画の中で演奏される「幸福の硬貨」という曲があるんですね。

映画のクライマックスでもある蒔野の復帰コンサートの最後、「幸福の硬貨」が演奏されるのです。

『マチネの終わりに』 コンサートシーン

その演奏を観るだけでも十分に価値があるほど、素晴らしいシーンでした。

では、最後に、蒔野が洋子の事を想い、復帰CDに寄せた素敵なコメントを紹介することで、この映画の感想を締めたいと思います。

音楽を愛するあなたへ

あなたの今日の悲しみが、明日の出会いによって、大切な思い出に変えられますように

『マチネの終わりに』 映画と小説の比較

『マチネの終わりに』は素晴らしい映画なのですが、やっぱり小説が映画の何倍も素晴らしいと僕は感じています。

マチネの終わりに 小説

小説を映画にすると、どうしても削らなければならない部分が多くでてきてしまうものですよね。

その削られてしまった部分に、とても大切なものがあるのになぁと少し残念に思ってしまいました。

まぁこれはしょうがないですけどね。

ただ、もし映画『マチネの終わりに』を観て、その哲学的な部分に興味を持った人は、ぜひとも小説も読んでみてください。

小説では、「哲学的考察の深さ」を映画よりも何倍も深く味わうことができますよ。

映画では早苗が、後悔の念から、二人を引き合わせるような役目を果たしています。

でも、小説での早苗は、全く逆のことをしているのですね。

早苗と洋子が喫茶店で話をするシーンは小説でも詳細に描かれているのですが、そこでの会話は聖書の話などが持ち出されていて非常に哲学的であり興味深いですよ。

もちろん哲学的な部分だけではなく、純粋に恋愛小説としても非常に優れています。

なんたって、あの超有名女流作家である林真理子が、「私が今世紀読んだ最高の恋愛小説」と称しているくらいですからね。

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映画『マチネの終わりに』完成披露試写会

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