本当に美しい涙がそこでは沢山流れていました。
南アフリカとの激闘の後、ピッチ上で組まれた円陣での光景があまりにも感動的で、涙なしには見る事ができませんでした。
その円陣の中心では、キャプテンのリーチマイケルが、みんなに語りかけていました。
「キャプテンとして誇りに思う。みんなも誇りに思うべき」
選手たちは、涙を流しながらリーチマイケルの言葉に耳を傾けていました。
色んな選手が、「もうこのメンバーでラグビーができないという事が寂しい」「みんなの事を本当の家族だと感じていた」と語っていました。
家族のように愛着を持っている選手たちとの最後の時間を惜しんでいる、そんな濃密な時間がそこには広がっていました。
ラグビーワールドカップが開幕してから、本当に夢のような時間が続きました、そして終わりました。
本当に幸せな時間でしたね。
選手たちは、多くのものを犠牲にして、日本ラグビーの為に、肉体と精神をすり減らし削りながら、このような偉業を達成してくれました。
ただただ、涙が止まらなかったのでしょう。
こんなにも美しい涙を、今後なかなか見る事はできないでしょうね。
司令塔として、そしてプレースキッカーとして、重責を担い続けてきた田村優。
4年前に国民的スターとなった五郎丸歩と常に比較されて、「俺は五郎丸じゃないから」と声を荒げることもありました。
想像を絶するプレッシャーがあったのでしょう。
そしてこの南アフリカ戦、先制トライを許した局面では、自身がタックルを外されてしまいました。
責任感の強い田村優のことですから、このタックルミスを何とか取り返そうと必死にプレーしていました。
しかし、前半途中で肋骨を痛めてしまい、しゃべるのもしんどいという状態でありながら、何とか後半途中までプレーし続けました。
チームがなかなか上手くいかない中で途中交代するのは断腸の思いであったことでしょう。
そんな色んな思いを抱えて、この円陣で涙する田村優には「本当にお疲れ様でした」と声をかけずにはいられません。
性格的にシャイであり、リーダー的な役割は今まで避けてきた田村優。
でもこの4年間は、本当にチームの中心として、戦術リーダーとして、君臨し続けました。
リーチマイケルも同い年の田村優のことを、「こんなにもラグビーを知っている選手には出会った事がない」と絶賛していました。
キャプテンのリーチマイケルが精神的な支柱として、そして田村優が理論的・戦術的な支柱として、二人三脚のような形でやってきたのでしょう。
リーチが語っている時に田村優の涙が止まらなかったのは、そのようにしてやってきた盟友へのほとばしるような熱い思いがあったのでしょうね。
今まで本当に長くラグビーを見続けてきましたが、感動的な試合が続いた後、試合が終わった後においてさえも、ここまで感動させてくれたチームを僕は知りません。
日本代表の夢は、ここでいったん終わりとなりました。
でもこの夢はまだまだ続いていくことになります。
リーチマイケルもまだまだ日本代表でプレーする意欲はあるでしょう。
松島幸太郎、流大、姫野和樹、具智元、松田力也などなど、若くて才能のある選手達が今の日本代表には揃っています。
彼らを中心として、またこの素晴らしい夢の続きを見させてくれるのでしょう。
まだまだこれからもずっと日本代表を応援し続けたい、そのように強く感じさせてくれた本当に素晴らしいチームでした。
この夢のような時間に深く感謝したいと思います。
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