サモアに勝ちました!
サモアの出来も今までの2試合に比べてかなりよかったので、厳しい時間帯も続きましたよね。
もどかしい時間帯をしっかりと守り切り、そして最後の最後に4トライ目を獲り値千金のボーナスポイントをゲットするという劇的な幕切れとなりました。
これまでの2試合を見ていると、チームとしての成熟度に差があるのは明らかだったので、危なげなくしっかりと勝ち切るんじゃないかと予想していました。
しかし、やっぱりそんなに簡単に行くもんではないですよね。
誇り高きサモアの戦士達の気迫は凄かったです。
プライドをかけて、自分たちの強みを前面に押し出してきました。
ただ、苦しい時間帯も、今の日本代表はディフェンスが以前とは比べ物にならないくらい安定しているので、チームとして崩れないですよね。
総タックル数141本のうち、127本を成功させて、タックル成功率は90パーセントと高い数値をたたき出しています。
サモアのタックル成功率は84パーセントですから、ディフェンスの精度でも上回っていたわけです。
大金星を挙げたアイルランド戦では、ラックでのターンオーバーはほとんど許しませんでした。
サポートが早く、ジャッカルに来た相手を二人目三人目の選手がしっかりと剥がし切っていました。
それがサモア戦では、何度かサポートが遅れてジャッカルを許していましたね。
それで攻撃のリズムが掴めずに、安全圏までスコアを引き離す事がなかなかできませんでした。
ただ、ワールドカップ前哨戦の南アフリカ戦で出たブレイクダウン周辺での課題を、アイルランド戦では完璧に改善するほどの修正力が今の日本代表チームにはあるわけです。
次のスコットランド戦までに、再度ブレイクダウン周りを引き締めてくることは間違いないでしょう。
姫野和樹のピンチを防いだジャッカルも素晴らしかったし、巨漢のサモアを押し切ったスクラムも凄かったし、田村優のキックも良かったし、松島幸太郎のランも良かったし、苦戦の中でも素晴らしいプレーが随所に光っていました。
派手なプレーは色んなところで既に紹介されているので、僕はここで地味だけど素晴らしかったプレーに注目してみたいと思います。
スクラムハーフは、流大が先発してゲームを作り、後半20分あたりでクローザーとして田中史朗が投入されるという形が定着しています。
そして田中史朗は、20分という短いプレータイムで、毎回キラりと光るプレーを見せてくれますね。
日本代表が大きくボールを展開して左ライン際を攻め上がり、チャンスが広がるかと思った時にターンオーバーされてしまう場面がありました。
サモアはターンオーバーしたラックから、スクラムハーフがボールを捌こうとした時、オフサイドぎりぎりの素晴らしいタイミングで相手スクラムハーフにプレッシャーをかけて攻撃を遮断したのが田中史朗でした。
これぞ、まさに匠の技術というプレーでした。
このプレーも非常に大きかったと思います。
日本代表でも、パナソニックでも、ハイランダーズでも、ここぞという時に田中史朗が披露してきたプレーなんですね。
田中史朗は、いつも自嘲するように言っていることがあります。
「自分は足も遅いし、長いパスも放れないし、長いキックも蹴れないし、フィットネスだって高くない。」と。
確かにそれは事実でしょう。
試合にはまだ出ていませんが、同じ日本代表スクラムハーフ茂野海人のほうが、田中史朗よりも足が速いし、パスも速いし長いし、キックの飛距離もでるし、フィットネスも高いでしょう。
それでも田中史朗が試合に出るわけですね。
高い経験値と、様々な局面で活きる抜群のタイミングプレーが田中史朗にはあるからです。
いくらスピードがあっても、田中史朗がサモア戦で見せた相手スクラムハーフがボールを捌く寸前にタックルするプレーはなかなかできないんですよね。
絶妙のタイミングで絶妙の角度から飛び出すことで可能になる田中史朗ならではのプレーです。
この田中史朗が見せるプレーを、オールブラックスで長く試合に出続けている世界最高のスクラムハーフの一人と言われるアーロン・スミスが真似ているんですよね。
田中史朗がハイランダーズでプレーしていた頃、アーロン・スミスが先発して、田中史朗が途中から投入されるという試合が多くありました。
二人はレギュラー争いを長くしていたわけですね。
田中史朗がハイランダーズでプレーするようになってから、アーロン・スミスのプレーの幅は間違いなく広がりました。
相手のタイミングを上手くズラすようなプレーも見せるようになりましたし、間違いなく田中史朗から学んでいたわけですね。
田中史朗にとって最後のワールドカップの舞台で、今まで長きに渡って築き上げてきた匠の技術をいかんなく発揮しているわけです。
そして次のスコットランド戦は、田中史朗がライバル視している、自分と似たタイプのスクラムハーフ、グレイグ・レイドローが率いるチームです。
高い評価を受けているグレイグ・レイドローですが、それほど身体能力が高いわけではなく、パスの長さ、キックの長さ、足の速さなど、田中史朗とそこまで変わらないような印象を受けます。
それでも世界のトップで戦い続けているのは、プレーの精度の高さですよね。
匠の技を持つスクラムハーフ同士の対決も本当に楽しみですね。
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